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螺旋を描く世界

私論だが。私は、或る世界が“浄化”され切っても、その状態は長くは続かないのではないか、と思っている。


イメージの根本にあるのは、イブン=ハルドゥーンの思想に近いものと思っている。『歴史序説』の訳元本を読んでないので、多分に自己解釈が混入することを否めないが。

…(前略)彼は人間社会を文明の進んだ都市とそうでない田舎としての砂漠に分け、生活環境の違いから、後者に住む人間のほうがより強力な結束力を持つ社会集団を形成しやすく、その連帯意識が歴史を動かす動因となると考える。この集団は支配への志向を持ち、やがて都市に根拠を置く国家を征服し新国家を形成するが、文明の発展に伴い連帯意識を喪失し、新たな集団に征服されるとした。

イブン=ハルドゥーンの言うような連帯意識の喪失、のためかどうかは分からないが、ある概念が支配的になると、そのうちに必ずと言っていいほど、概念に綻びが生じてくる。その概念の綻びを温床に、支配的概念に反逆する集団が発生。そのうちの多くは消失するが、時折、そういった集団の中から勢力を拡大するものが出現し、既存の概念と激しい闘争を繰り返した挙句、新たな概念が支配的な世界が完成する。しかしその概念もまた歳月と共に綻びが生じ…以下繰り返し。
最たる例が『北斗の拳』の世界だろう。“腐敗と自由と暴力”の世界*1の中から、北斗神拳なるものをもって悪役を倒していくケンシロウは、まさに新たな時代の幕開けを期待させる英雄である。…勿論逆のパターンもある。労働者の解放と平等の理想を掲げた共産主義国家の誕生を、労働者達は手放しで歓迎していたが、その理想の中の虚をつかれ、何時の間にやら人類史上屈指の虐殺大粛清を施行した独裁者の誕生をみることになった。いわば“反英雄”である。もっとも、その国も先刻の世紀末を目前に、全世界が驚愕するほどのあっけなさで、崩壊したが。
それは人間のカルマなのか。それとも現実世界における「フォース」なのか。仮令世界が“消毒”されても、それに叛く勢力は、必ず発生する。“消毒された空間”に空虚感を感じても、それは今だけだろう。そのうちやってくる“狂気と希望と幻滅”の時代が来たときに、それを“楽しめる”ように、水面下で準備しておけば、良いのではないだろうか?

ああ楽しいとても楽しい。
闘争だよ、考えてもみたまえ君。
きっと血みどろの闘争になるに違いない。
素敵だろう? 闘争、闘争だよ。

平野耕太HELLSING

但し。幾ら繰り返しが続いているからといって、果たして世界は“元の位置に戻ってきているだろうか”? 否。現代にローマ帝国が存在しないように、繰り返しが続いているにも関わらず、再び同じような概念が支配しても、それは所詮“同じよう…”であって、必ず差分を内包している。その差分こそ、人類の種としての進歩に他ならない(勿論、破滅に向かっての進歩かもしれないが…)。繰り返しの循環にして、しかも元の位置に在らず。世界は螺旋を描いていくδημιουργóς

*1:アニメ「北斗の拳2」オープニングソング: TOM CAT「TOUGH BOY」より

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