特殊になりたい、だなんて、生まれたときから変な生き方しか出来なかったオレは、考えた事も無かった。
「人とは違います。人とは違って生まれついてしまった者は、人の世には馴染めませぬ。かといって、死ぬるわけにもゆきませぬ故、何かで、死ぬまでの時間を埋めなければなりませぬ」
「退屈しのぎと、あの男は言っておりましたよ」
「あの方らしい……」
「———」
「人と、何かが違うというのも、何かが人より優れてしまうのも同じです。そういうこでは、お淋しいのは、清明さま、あなたみ同じでございましょう」
八百比丘尼が声をかけると、清明は苦笑した。
「はは——」
と博雅が笑うと、
「博雅さま、あなたも同じでございますよ」
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/11/01
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