「医学教育でのひとりごと」KU。
いや、毎日新聞にしては真っ当な社説。なんだが、その医療崩壊状態の促進を煽ってたのはどちら様よ? とチクリしておきたくなるあたり、オレも相当やさぐれているとは、自覚しているのだけれど。
以下、記事引用。時間が経って「このエントリは閲覧できません=そんなこと書いた覚えありません」では、困るからね。
医師不足が深刻だ。小児科や産婦人科では医師の絶対数が足りない。都市でもお産で入院できないところがある。地方はもっと切実だ。病院に行っても医師がいないため、まともな治療を受けられない。
国民皆保険制度とは、保険証1枚あれば、全国どこでも同じような医療を受けられることだ。医療の地域格差は、システムの信頼が崩れることにつながりかねない。由々しき事態だ。
厚生労働省は医師不足に陥った直接の原因を、病院勤務医の労働環境が悪化し退職者が続出した、と述べている。
その通りではあるが、勤務医の労働環境が悪くなるには、複合的要因が積み重なっている。医師臨床研修制度もその一つだ。医師は免許を取ったあと2年間、医療現場で診療経験を積まなければならない。医局制度万能時代は、研修先が大学病院に集中していた。ところが希望に応じる方式が導入されたため、研修医は都市部の待遇の良い民間病院に集中した。そのあおりで人手不足になった大学病院が地方の病院に派遣していた医師を引き揚げた。その結果、地方の病院で医師が不足することになった。
小児科、産婦人科はもともと労働条件が過酷なうえに、医療過誤訴訟を恐れてリスクの多い診療科を選ばない若い医師が増えているという。
事態は悪化しているのに、厚労省は「毎年4000人ずつ医師は増えており、必要な数はまかなえる」という立場を改めようとしない。医師の数をめぐっては、政府が「人口10万人当たり150人」を目標に1県1医大を推進した。しかし、いずれ医師が過剰になるとの需給見通しをもとに、1982年と97年の2回、医学部の定員を減らす閣議決定を行った。医療費の伸びを抑えるには、医師を増やさない方がいいとの判断も働いていた。閣議決定は現在も医師需給の基本となっている。この政策誘導で、医師の数はピーク時より定員が8%も削られた。
一昔前の閣議決定を守り続ける国の姿勢は時代錯誤もはなはだしいのではないか。計算上で医師の頭数がそろっていたとしても、医療現場の実態は偏在と労働環境悪化で医師数は足りていない。このまま放っておいたら、医療は取り返しのつかないことになる。
政府は医師削減レジームから脱却し、閣議決定の見直しから始めなければならない。医師はもっと増やしていい。それが時代の要請でもあるからだ。
医療技術は日進月歩で高度化し、1人の患者にチームで対応している。医師合格者の3割は女性だ。出産や子育てで休むこともあり、カバーする人員も必要だ。OECD(経済協力開発機構)加盟国の医師数平均は10万人当たり310人なのに、日本は200人で加盟国中最低レベルにとどまる。
社会保障制度は国の屋台骨だ。医療が崩壊して財政再建が成就したとしても、国のかたちは成していないことを肝に銘じたい。
毎日新聞 2007年8月22日 0時08分