FLIPLIP 『オモイオモイ』鑑賞記 II相当。「別エントリで」と言っていたのがコレ。しかし今回はあくまで触発文章であり、本編を知らなくても読める仕様にはしてあり…まぁぶっちゃけ、過去のエントリの焼き直しに過ぎんのだがねぇ…。読みます?
可能性の海
この表現は2011年3月25日のエントリの表題から。同エントリより再掲。
そうなのだ。人間の未来は何だって“可能性でしか語れないのだ”。それが良かれ悪かれ。
未来は何時でも揺らいでいる。人間とはその未来に満ちる可能性の海に揺蕩う一掴みの藁でしかない。最善の選択をしたつもりでも、結果が最善である保証は何処にも無い。ならば、その未来に対する不確定性に対する恐怖感と、「別の選択をしていれば異なる結果であったかもしれない」という先立つはずの無い後悔の念は、未来永劫において付き纏うのである。
だがしかし、その数多の可能性のなかで、いずれかの道を選ぶ選択を決断しなければ、遅かれ少なかれその可能性の海の底に溺れ逝く。ならば、不確定性に対する恐怖と、“たら・れば”の後悔の念を踏み越えて行う決断のみが、未来を切り開く、可能性の海原を漕いで進む“櫂”に他ならないのである。
To Do Or Not To Do?
皮肉なるかな、このような事を思うのは職業柄である。我が生業である「血液内科」に限らず、全ての医療行為において、未来は可能性である以上、一切の医療行為には治療効果の期待と、その期待を期待を裏切るリスクが不可分、表裏一体となっている。しかし、病状が進行し、あるいま瀕死の今際に至って、今ここで決断しなければ未来は絶望的であることが判明している、ならば“To Do Or Not To Do?”の決断を迫られる、あるいは患者家族に迫る修羅場など、幾多も踏み越えねばならないのである。而して、期待せざる結果にならぬよう、あらゆる可能性を想定し撃破する為に最大の血道を上げるのが、我々の生業である。それは、このサブタイトルである「To Do Or Not To Do?」(2009年3月16日のエントリ)や、2010年8月29日の「言霊返し」で述べた通りである。しかし、気概虚しく救えなかった“医療の地平面”*1の向こう側の壁を超えたくて、今この身は帝都にありて研究職に身を挺しているのである(2011年2月1日「アラヤ識」参照)。
思いは薄れども滅せず
僕は怖いんだ、このオモイは徐々に薄れて消えていく、だからね…言葉にしたら嘘になる
FLIPLIP vol.7 『オモイオモイ』 作・演出 福地慎太郎
I don't think so. 迂闊だったな。想い—正確に言うと記憶に伴う感情—は減衰するのが自然である。いつまでも減衰しない感情は脳の情報処理能力を超え、ハングアップさせる。それこそが気分障害という“疾患”に他ならない。減衰しない記憶に伴う感情が如何様に苦痛を伴うものか、私は身を以て知っているよ? それ故に脳には「抑圧」という機能がある。
而して、感情は減衰しても記憶は、それを思い続ける限り消えない。それは想いを受け継ぐということに他ならない。その記憶は、己が内にて代謝し、未来を切り開く糧となる。然らば、嘘にはならないのである。
Wer aber vor der Vergangenheit die Augen verschließt, wird blind für die Gegenwart.
([訳] しかしながら過去に目を閉ざすものは結局のところ現在に対しても盲目であります)Richard von Weizsäcker「Zum 40. Jahrestag des Kriegsendes(荒れ野の40年)」
1985年5月8日 ドイツ連邦議会における大統領演説より
受け継ぐと言うことは過去を得るだけではない。そこから先に行く権利を得るということだ! ——そんな未来と過去を内包する矛盾として今があるのだ戸田・命刻! 故に我ら今を行く者、しかし貴様は過去を受け継ぐのではなく、過去になろうとして今すらも放棄する者だ!!
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つまり全ては過程であり……
今すらも未来への礎なのだ
失ったモノを取り戻すためではない
全ては先へと進む糧となるのだ
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ま、過去を受け継ぐ人生は、修羅の道だがの。
いっそ忘れてしまえば楽なのに
…まぁ、そうもいかんぜよ。
忘れる事はつまり進化をも忘れる事
このようにゆるやかに死んでいくのと同じことだ
飛び方を忘れ 敵を忘れ しまいには鼠より無力な地を這う鳥になり下がるのだ忘れるなヤコ 貴様も何一つ忘れるな
我が輩の挑発も拷問も アヤやHALに流した涙も全部忘れるな
忘れなければ貴様は再び進化が出来る
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想いを継ぎて可能性の海を漕いで行く
過去に苛まれ、未来に怯え、後悔の念に押し潰されそうになりながら、想いを継ぎて可能性の海を漕いで行く。そういう生き汚い人生を、私は歩んでいきたいと願うのだ。
*1:このblogで再三使用してきた表現であるが、これの元ネタが”事象の地平面”であることは言うに及ばない。