ヨシコレ @Yoshikore
「黒桐。バベルの塔ぐらいは知っているだろう。バビロニアに伝わる神の門の神話だよ」
「——はあ。ブリューゲルの描いた、ラセン状のおっきな塔の事ですよね。たしか……高い塔を建てて、その頂に神殿を作って神様が簡単に下りられるようにと人間は考えたのだけど、神様からしてみれば人が天に近づく事は傲慢で、塔を壊し、人間が一つにまとまってこういう事を繰り返さないようにって、言葉を乱して人々をバラバラにしたっていう」
「ほう、詳しいな。そうだ、それが人類最古の神話に伝わるバベルの塔の伝説だ。この神話が示す事柄は多数あるが、最も注目すべきは『言葉を乱した』というところにある。
神は人類という種が分かれるようにと人々を区分けしたんだ。肌の色や体質からではない。もっと分かりやすく根本的な部分、つまり言葉でだ。日本人と外人の最大の違いは髪の色や瞳の色ではなく、その言語の違いだろう? それこそが最も巨大な断絶の壁だ。意思疎通ができなければ、人々はバベルの塔のような巨大建造物は建てられない、と神さまはふんだんだろうね。しかし、結局人類は地球上で最も栄え、霊長となり、言葉の壁さえもとっぱらってしまった。」
- 作者: 奈須きのこ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/06/08
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (450件) を見る