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観光学事始め


心乱れると温泉にふらっと出かけるのが俺の性癖。作並温泉に行くつもりだったんだが、最後の1部屋を誰ぞに獲られた。なので再び鉛温泉へ。

歩き、旨い飯を食い、湯につかる。深酒をせず、朝に起きて再び湯舟に。これほど健康的な生活はない。"湯治"という概念も頷けるものである。
さて、"再び"と述べたのは当然。昨年9月にもここに来ている。
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面倒くさいときには、"もう行程を知ってる"場所に行くのが一番である。もっとも、前回は2018年では盛岡駅から在来線に乗り換えて花巻駅へ、今回は盛岡駅から新幹線「やまびこ」に乗り換えて新花巻駅から無料シャトルバスに乗っている違いはあるのだが。

数年前に交際していた女性の実家が岩手でね、水沢江刺駅で御両親の面会し(この時点では結婚も考えていた)、中尊寺や遠野を案内してもらったのだが、親父さんの一言が、どうにも脳裏を離れないのだ。
「岩手なんて見るところないのによく来るね」
まぁ、当時の彼女が居住していた*1仙台の伊達政宗公ゆかりの地から比べればそうだろうけどさ。それでも、"まだ「盛岡市」「花巻城址」「鉛温泉」「龍泉洞」「遠野」「松川温泉」しか"行ったことがないのである。
俺はまだ三陸海岸を見ていない。北上山地の北部と南部で地質が違うのを目の当たりにしていない。岩手山早池峰山に登っていない。八幡平にも行っていない。小岩井農場も行っていないし、数ある城址にも行っていない。既に行った場所ですら、春夏秋冬、魅せる姿は違うというのに。
どうして、どうして。
"北海道の怠慢"を横目で見ていたからこそなのかもしれない。海産物をエサに観光客を吊り上げたい思惑が透けて見えるのは、築地も小樽も変わらない。まだ積丹うに丼食った方がマシ。旭山動物園はその反動だと思っている。入園者は減少の一途、市民すら見捨て始めたあの動物園が、誰が有名になると思ったか。あの"絶望と希望の過程"を知っている*2ものとしては、表現しがたいものがある。
さらに拍車をかけたのが"第一次島根遠征"である。
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俺は両親を連れて出雲・松江を周遊した。ただ、母は首をかしげるのだ。
「なんでこんなに見るべきところがあって、素敵にお茶が頂けるのに、有名じゃないのかしら?」
…一応、母は華道・茶道の師範代免許を持っています。そうだからこそ連れてきたのだが…
スタッフは「これでもいろいろアピールしているんですが…」どこ行っても苦笑されていた。

地方の観光を盛り立てるのは、一時の流行りに乗るのでもないし、一点豪華主義でもない、北海道の驕りを象徴する俺の叔父が未だ口にする"内地"という言葉に対する反動*3でもない、"一村一品”などというノルマでもない、「どうだこれが俺たちの守るべきものだ」と言い張る矜持を、そこに住む人々に思わせるかという話である。「これをやれば観光客が増えるぞ」などという一過性の"戯言"は、とかく金に飛びつきたい連中には受けはよく、だからこそ"ハコモノ"が乱立した*4のだけれど。大洗町のパターンは「これをやれば観光客が増えるぞ」が一過性でなく町全体がガチになったのと、存外需要が持続しただけなので、お手本にしてはいけない。

アピールすれば広がるものでもない。ハコモノ作れば終わりなわけでない。何が流行り廃れるか、株価の変動より性質が悪い。殺到すれば焼き尽くされ、誰も来なければ忘れ去られてしまう。
「観光学」よは、かくも難しいものである。

*1:今は知らん

*2:父が市職員で当時の市会議の運営に関与していた

*3:内地=本州・四国・九州にない「広大さ」や北方水産物がありますよという"誘惑"

*4:もちろん、結果が分かってて金になるから建設した輩も罪深い

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