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オルクセン王国史 二次SS 「ドーラとタウベルト: ローカライザー」

僭越ながら、二次SSなるものを想いついて作成せずにはいられなかったので。
特にネタバレは無いと思うが、状況を考えるにweb版読了後を推奨する。



コボルト族のブルング・トアラグはキレていた。激怒していた。自尊心を大いに傷つけられたからだ。
「君だ! 君こそが必要なのだ!!」
あのポスターと高給でコボルトの徴募に加わった。魔術力ならだれにも負けない! という自負があって我こそは! と挑んだのだが。
あっさり落伍した。
原因はあの試験だ。ヴィルトシュバインの高楼から地上を見ろだと!? 冗談じゃない!!
ブルング・トアラグは、高所恐怖症だったのだ。
ちくちょう! なんで俺が!! こんなに魔術力の高い、この俺が、落ちるだと!!
自尊心を大いに傷つけられた怒りは、知る由もない。

しかし、後日、もうどうしようもなく、脱力してしまった。
「コボルトが大鷲に乗る、だと…?」
あの試験の目的は、それだったのか。あの高所で大鷲族と飛んでいる仲間のコボルトを見て、思った。
「あいつ、正気か…!?」
もう、信じられなかった。大地に足がつかないんだぞ? 怖くないのか?
…俺には、できない。
悟ったのだ。これは、こればかりは、どうにもならない。

しかし、幾許かの時間を経て、問題は発生した。
文字通り、大鷲族は"鳥目”なのだ。一部に夜目の効く部隊はいたようだが。それにしても、そうでなくても、夕暮れにさしかかると着陸地点が分かりにくくなる。着陸地点に夕霧が立ち込めたならなおさら。オーク族の管制官が、篝火を灯して誘導しようとしても、事故が続発した。
大鷲族族長ラインダースも、統合参謀本部も頭を抱えた。

そんな話を聞きつけ、ブルング・トアラグは歪んだ笑顔を浮かべた。
すぐさま、行動を開始した。
おいおいおいおい、俺の出番じゃねか!

その頃、ドーラとタウベルトはバーンシュタイン教授の指示の下、長距離通信の訓練を行っていた。
長距離なので、当然二人ともヘトヘトだ。速く帰還したい。
ようやく着陸地点に辿り着こうとした矢先に、濃霧が立ち込めて着陸地点が分からなくなった。誘導灯も見えない!!
「坊主! どこが着陸地点か分からないぞ!」
「え、ちょっと待って。『こっちに来い!』って誰かが言ってる」
「誰かって誰なのだ?」
「誰かは分からないけど、同族のコボルトの声だよ。ドーラ、僕の指示通りに飛んでくれる?」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫。近づくにつれて『こっちに来い』の声が大きくなってる。このまま行こう!」

果たして、ドーラとタウベルトは濃霧の中、無事着陸地点に到達した。ドーラに言わせれば、霧を抜けたらいきなり着陸地点があったから、かなり焦ったとのことだが。
「声を描けてくれたのは君か! ありがとう!! 本当にありがとう! 無事に着陸できたよ!」
「いや、無事ではないんだが」
ドーラのボヤキは他所に、タウベルトはその発信源の腕をつかんでブンブンふりまわしていた。
「喜んでくれて嬉しいよ。俺の魔術力は正確じゃないが、一番遠くまで飛ばせる。誰よりも遠く飛ばせる。そういう自信があったんだ。選考で"何で俺が落とされたんだ"と憤ってたが、どうだい、これなら役に立つだろう?!」
「君はすごいよ! すごい能力だよ!!」
もうタウベルトは感激しきり。一方のドーラは
「しかし着陸地点の高度が分からなくてはな。霧が晴れたらいきなり地表では、鳥の肝でも冷えたぞ」
それはもっともな話である。
しかし、その辺りはブルング・トアラグの有能なるところ。コボルト種で長髪を小さなベルが付いたゴムでポニーテールにしているもう一人を連れてきた。
「クーレイ・ターマと申します。噂話が好きなせいか、魔術力を"水平方向"に飛ばすことが得意ですが、逆に言えば水平方向にしか飛ばせませんので。私の魔術波の強弱で、高度を推測できるのではないでしょうか。これから試してみないと分かりませんが。これからの検討は、教授の認可は得ております。ご協力頂けますでしょうか?」
確かに彼女の言う通り、高度によって魔術力の波の"強度が異なる"なら、高低差も推定出来るかもしれない。
まさかそこまで準備しているとは。ドーラもタウベルトも、言葉も無い。

ただ、一つ確実なのは。
「敵地では使えませんね」
それはそうだ。敵地でこれを使用しようものなら、「ここに着陸地点があるぞ」と教えているようなものである。
「ですから私達は、貴方達の帰還を誘導します。貴方達の帰還を心から望みます。」
「できる事なら、前線で戦いたかったんだがな。必ず、必ず帰って来い!!」
これには、ドーラもタウベルトも、返答は一つしかない。
「お二人の誘導で、帰ってきます!!」

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