私も医師の端くれ。血液内科に関わる学会に発表や講演をすることもある。というか、今月末にも行くが。
で、医学系の学会である発表のカテゴリに「症例報告」がある。学会だけでなく論文でもある("Case Report")。いっそ症例報告だけ集めた雑誌もあるくらいだ。
「たった1例の話が何になるの?」とは言うなかれ。で、思い立ったのが「メーデー!」である。
メーデー!
terra-khan.hatenablog.jp
このエントリで述べた通り、私は「メーデー民」である。「メーデー民」とは、ナショナルジオグラフィックチャンネルで放送されている、カナダ発の、航空事故を検証するドキュメンタリー番組「メーデー!航空機事故の真実と真相」の偏狂的視聴者ファンのことである。
ではなぜ航空事故を徹底的に検証するのか。
今後類似の事故が起きないようにするためには何ができるかを知るためである。
通常業務でも「インシデントレポート」や「事故報告」はあるが、航空事故に関して徹底的に調べるのは、まず航空機そのものが各国、各社の製造によること、航空機以外に出発・到着する飛行場、および乗客・乗員に関わるのでそれらが属する国のすべてに事故の原因が関わってくる、極めて複雑な要因を明らかにしなければいけないというのはある。
しかし、それ以上に、1つの事故における死亡率が高いのが航空事故だからである。高所から放り投げられて地上に激突したなら生存できる訳は無い。縦しんば不時着しても燃料による火災で死ぬ。*1
このため、これまでの航空事故を教訓として、航空規定は改訂されていった。
「安全規則は血で記されている」
"同じ事故は起こすまいぞ"という意思で、事故調査は行われ、安全規則は改訂される。
それでもなお、事故は起きるのである。
症例報告の意義
症例報告はそこまでの"再現性"はないかもしれない…と思ったら間違い。
「あの…こういう事があったんですけど…」と誰かが発表して、それがレアケースなら仕方がないが、
「あー、うちもこういうことがあったわー」「ここでもあったな」「私の施設でも…」
と誰かが思い始めたら、それは一大事なのである。ここに、医学の発展の糸口がある。
先の"メーデー!"と違うのは
「こういうことがあったの、で気を付けて」
「こういうことがあったので、これって良い治療になるかも」
ネガティブ、ポジティブ、どちらもありうるのである。まぁ、ネガティブデータを出すのは好まれないけど。だからこそそれはそれで重要なのだ。「メーデー!」を導入にしたのはそういうこと。
報告が、発展の口火を切るのだ。同じ転帰を歩ませずに済むかもしれないのだ。
そこに、症例報告の意義がある。