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日々の戯言、写真、旅行記、好きな音楽、格言、Minecraftプレイ記録

無何有の夢

毎度恒例戯言シリーズ、若しくは中二病妄言とも言う(苦笑)。ではどうぞ。

事始

Yoko Kanamitsu @

Terra Khan @

Yoko Kanamitsu @

時には昔の話を

今は昔。医学生だった頃の事。現医学生諸君ならきっと分かるだろう、所謂「Step」シリーズが、俺は大嫌いだった。結論にたどり着くまでの長文が冗長過ぎるのだ。だから選んだのが「標準」シリーズだったのだが、あれはあれで辞典並みの情報量を有する代わりに、格式高い難解な文章が延々と続くものだから、理解するまでに酷く時間を要するのだ。非効率的ったらありゃしない。
ましてや、よりによって俺が最も好む、かつ得意分野と称する免疫学・分子細胞生物学分野は、@嬢の言うとおり“マニアックか、アニメライクで簡単すぎ”の両極端しかない。…結論から言うと、別にこの分野に関わらず、医学書ってのはホントにこの両極端しかない。2009年12/23のエントリ「Dance with molecule!」で述べたとおり、“分子と踊る”のは非常に楽しい事なのに、そしてその分子機序(病理学的にせよ、薬理学的にせよ)が臨床に直結する血液内科分野が、いかに興味深いものか、この両極端な教科書群のせいでかえって取っ付き難くなっているのは、昔から歯がゆいばかりだったのだ。
…ついでに本音を言うと、実は免疫学に興味を持ったのが「NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体 Vol.6」の、あの免疫担当細胞達のCGアニメーションだったと告白したら、皆さんは笑うだろうか。

もともと国語が苦手な“右脳人間”な俺は、冗長もしくは格調高い文章を延々と読まされるよりも、「図で見て分かる」方が好みなのだ(だから“分子と踊れ”という文言が出てくる)。同期諸氏ならお分かり頂けよう、俺の講義解説や過去試験対策に、やたら図説が使用されていたのを。

先達に続け

だからtwitterで飽きもせず相変わらずの中二病発現をしていたのである。「免疫関連の教科書は両極端なものが多すぎて『いつか俺が分かりやすい教科書作るんじゃー』とか息巻いていたが。」。冗長な文章では無い、かといって格調高い文章の重責でもない、分子が踊る様を図や、あわよくばアニメーションで表現した「見て分かる」免疫学・分子細胞生物学・血液内科学の教科書を作るのが、未だ叶わぬ夢であった。だから「その目標の成就はまだ先らしい。」と消極的になる。
だが、やはりフロンティアスピリットに富む先輩っのはいるもので、Dr.medtoolzが「レジデント初期研修用資料 内科診療ヒントブック」を出版したのは記憶に新しい。

レジデント初期研修用資料 内科診療ヒントブック

レジデント初期研修用資料 内科診療ヒントブック

この本が革新的であったのは、現象論・病理論から症状を論じるのではなく臨床家が症状を認めた場合において、どのような疾患を疑い、除外して行くかという逆ベクトルを明示しただけでなく、従来のハウツー本とは異なり、文章羅列ではなく“表に似た何か“*1を提示し、診断の思考回路を図表化した、この2点において革新的であったと考えている。

存在理由

ではその二番煎じをしたところで、正直余り意味が無い。むしろこの身は基礎研究を志す“基礎研究が臨床に直結する”血液内科分野に身を置く以上、望むのは基礎分野である“病態生理”と“臨床所見・治療方針”の連結だ。そこに薬剤が関与する以上、「Dance with molecule!分子と踊れ!」は必然だろう。それを如何に“見て分かる”ように作るか、きっとそれがDr. medtoolzの劣化コピーに堕ちない、俺の見果てぬ夢なのだろう。

もう一つの事始

で、実は。ここ最近急性前骨髄性白血病の患者が多発し、特効薬であるATRA(ベサノイド®)をやたら使うことになったのだが、ここで病棟看護師から疑問が出たのだ。「なんでATRA症候群って肺に合併症が多いんですか?」
別にATRA症候群の所見は肺に限ったことではないのだが、確かに症状や他覚所見で出現しやすく、また予後に関与するのも肺である。その問いに対する解説の依頼を受けたのが、“最後の契機”だった。で、早速レジュメを仕上げて科長の監修を受けたのだが、科長から一言。
「すごく分かりやすいんだけど、医者相手ならともかく看護師相手には難し過ぎないか?」
なら、研修医や将来血液内科を志望する医学生にはどうか? 改善点があれば御批評を賜りたく、またもし本当に分かりやすいなら御使用頂きたく、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで「表示—非営利—改変禁止」を指定した上で、一般公開に踏み切ることとしました。

TKLecture01-RASynd.pdf 直
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。

事始の@嬢が希望するような「免疫のテキスト」ではなく、あくまでも「血液内科分野」という随分狭い範囲での作成物なのだが、今回のモノをpilot studyに、今後俺がどんなものを錬成出来るか、考えてみたい。
皆様の忌憚なき御意見、お待ちしております。

*1:medtoolz先生すんません、どう表現したらいいか適切な表現が出ないです...

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