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Dance with molecule!

長文ウザいので梱包。ではどうぞ。
先日、医局長から通達があり、“八割方”現在の職場に残留することになったようだ。うーん、それ“八割”じゃなくて“十割”でしょ? まぁ、想定されていた事態ではあるので、驚きもしなかったが。で、某看護師さんに言われたのが「ここなら給料いいし、別に大学に戻らなくてもいいんじゃない? 何で大学院行くの?」
…そう言うだろうね、研究に興味の無い人達なら。
しかし生憎さま、俺が大学院に行くのを望んだのは、“足の裏の米粒”と称される“チンケな博士号”を取りに行くのが目的ではない。目的は1つ。“Dance with molecule!”=「分子と踊れ」だ。
例を出そうか。急性リンパ性白血病急性骨髄性白血病では、何故中枢神経浸潤の頻度に差がある? Blood-Brain Barrierの突破を“手引き”している接着分子は何? 骨髄の“ゆりかご”Nicheを形成する分子は? 造血幹細胞移植との関連は? G0期白血病細胞をそこから叩き出すにはどうしたらいい? チロシンキナーゼインヒビターの組織内移行率は? 以前にボソッと書いた、次回の内科学会地方会の発表ネタだって、(未発表で論文化もしてないからまだ多くは語らないが)久しぶりに「血が沸く」ネタなのだ。
元々、基礎研究志望であった俺が血液内科を希望した理由が、その発病と治療に基礎分野の研究が密接に関わっているからだ。基礎研究が治療方法の飛躍に直結する分野だからこそ、俺はここに身を置いている。
そしてこの2年弱(初期臨床研修期間を追加すれば4年弱か)、何人の患者さんの治療に携わったか数えきれない。予定通りの治療を完遂した人もいる。死の淵から救い出したこともある。どうやっても救えなかった人もいる。…では何故その治療で上手くいった人といかなかった人がいる? そこの違いには何がある? どうやれば今まで救えなかった人を救えるようになる? …それはきっと、これからも続く臨床経験をまとめ上げ、基礎研究分野に持っていく“宿題”であり、俺を基礎研究に駆り立てる“動機”になるのだ。
嘗て、学生時代に2か月の夏季休暇中にある基礎研究室にお邪魔して実験の“まねごと”をさせてもらったことがある。その時の研究室の助教授(当時)からこんな事を言われた。「お前がもし基礎研究だけをやりたいなら医学部を中退して俺の所へ来い。だがお前はあと少しで医師の免許が取れる。それは俺達にはない資格だ(その研究室は理学部や工学部の出身者ばかりであった)。だからお前には、出来れば臨床と基礎の橋渡しをして欲しい。」この言葉が、今の俺を支えている。その助教授が後で酒の席で話してくれたのが、今の研究職に携わる切っ掛けになったのが、若い自分に友人を悪性疾患(詳細は訊かなかったが)で亡くしたからだと、語ってくれた。それを話してくれた時の表情の陰りは、今も忘れない。
医局長も現上司Bossも、どちらかと言うと“臨床タイプ”だ。臨床から基礎を見る方向になる。前述の次回の内科学会地方会の発表ネタも、元はBossが指摘したことだ。おそらくその臨床医としての炯眼には、正直俺は敵う気がしない。しかしだからこそ、Bossが気づいた事柄を、基礎研究で検証し、治療に寄与する形でキックバックするのが、きっと俺の役割なんだろう。
…さて、あと1年ここを勤め上げてから、舞踏会に参加する事にしますかね。

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