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ため息つくほど度し難い II

前のエントリでNATROM先生のところにリンクしたばっかりに、向こうから大量の閲覧者が流れ込んできてる。何の縁があってか、折角閲覧頂いたのに、上記の味も素っ気もないエントリだけでは余りに寂しいので、改めてエントリを上げることにする。おk?
もうひとつ。なまじ例え話をするとその辺りで突っ込まれる可能性があるので、こちらは比喩無しガチンコ勝負で
とは言え、本題の中核に関してはNATROM先生、有好從桜氏がエントリを上げて下さっているので、さらに蛇足を加えるような愚行はしないでおく。
ただ一点、どうにも理解し難い事柄があったので、その点だけの言及に留める事にする。上記リンクの他、本件に言及した他のサイトのエントリのコメント欄、もしくはブックマークコメントに、なぜか1件は紛れ込んでくるコメント。

「意図的に自分に刺した針を患者に刺す可能性」

そんな小面倒なことしなくても

有り体に言えば「意図的に自分に刺した針を患者に刺す」なんて小面倒なことしなくても、どさくさに紛れて殺める方法など、挙げれば30を下らない。もっと極端に言えば、ウイルス感染の有無に関わらず、異なる血液型の血液を他人に打ち込むだけで、場合によっては十分な殺傷能力を有するのである。俺はHIV感染者ではないが、意図すれば何時だって殺人はできるが。
もっと言えば、別に医療関係者じゃなくても、やろうと思えばどうとでもなるだろうに。マンションの上水道貯水槽に青酸カリを流し込む、なんてのはありきたりな手法で、何かの集会のど真ん中で、酸素系と塩素系の漂白剤を混ぜるだけで、それ相応の殺傷能力は発動できように。
…言うまでもないが、俺はそんな事はしない。タダの反例である。どこの誰でも殺意を抱けば如何様にもなるのに、なぜ“HIV感染者の医療従事者”だけを対象に「意図的に自分に刺した針を患者に刺す可能性」なんてレアケースを警戒せにゃならんのだ、という事である。

“差別”の本質

上記の太文字の文言の中に、根底に流れる「差別意識」の指摘を混ぜておいた。上記の逆を言えば「“HIV感染者の医療従事者”は“意図的に他人に感染させようとしている可能性がある”」になる。それこそ、俺が憤慨してこのエントリを書き上げた、各所に散らばるコメントの根底にある疑念である。これを差別と言わずして何と言う。
もし「それはHIV感染者に限定した訳ではない」という下手な弁明を打とうものなら、噴飯モノである。前にわざわざ“俺はHIV感染者ではないが、意図すれば何時だって殺人はできる”と、一歩間違えば誤解を生みかねない発言をしたのは何故か。下手な言い訳は「医療関係者は何時でも人を殺めることができるのだから信用できない」と範囲拡大を招く以外の帰結がないからである。「応召義務」なんて縛りが無ければ、自分を信用してくれないのに病気だけ治してほしい、なんて虫の良い発言をする輩など診療したくもないが。そうもいかないから嘆息するのだ。
「悲観して健康な人を妬んで、こっそり注射のとき自分の血を付けて感染を広めようとする」などと言わないように。私は自分の病のせいで常時絶望してるが(苦笑)。

“信頼”という名の契約

まぁ、医療関係者とはいえ唯の人間の集合であるから“善意の純粋培養”が成り立っている訳では到底ないし、だからこそ時々スキャンダラスな事件が発生する事は否定はできない。だがあくまでもレアケースだ。それに前述の通り“どこの誰でも殺意を抱けば如何様にもなる”のだ。別に医療業界に限った話でもあるまい。
そもそも、医療行為そのものが、ともすれば刑法の傷害罪にひっかかる行為なのだ。人間の体に針刺したり、毒物(抗癌剤)盛ったりしてるのだから。それでもそういう行為が容認されているのは、前提として「その行為が疾患治療という効果を期待できるから」なのだ。とは言え、治療したからと言って、期待される効果が必ずしも現実化する程、甘くない疾患が多いのも事実。ならば、その不確定性を承知で、尚治療を受けるに足る根拠は、最早“承諾書のサイン”を超えた“信頼”という契約testamentでしかない。信頼が無ければ治療のしようもないし、そもそも信頼できない相手に自分の命を託したくもあるまい。医療従事者が独善的というのなら、いかなる疾患に罹患しようとも、ぜひ受診しないで頂きたい。
あらぬ偏見や誤解でその“信頼”を侵犯するなら、若気の至りに乗じて公然と反駁する。ただそれだけの事である。

Appendix

ちなみに。HIV感染者やAIDS患者の診療はどの科が行うと思う? 俺達「血液内科」だよ。自分の患者に向けられる言われなき敵意には容赦なく反撃する。当り前だろう?

追記

ついに感染症専門の大御所まで言及に至ったので当該エントリへリンク追加。

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