ま、冒頭は皮肉ですよ、皮肉。
Tw3連
エラーII種
さて、「電力需要が供給を上回り計画停電が必要かもしれない(だから原発再稼働は必要だ)と言っていたのに、実際は需要は供給を上回ることはなかったではないか!」という非難だが。
実際に計画停電が実施された昨年の東電管内では信号消灯で交通事故が生じたし、また在宅での人工呼吸器・酸素投与器使用の患者さん方にはそれこそ「命がかかった」切迫した状況だった訳で(勿論病院で停電などされたら、その影響は想像に余りある)。だから計画停電も需要のオーバーフローも、“絶対に起こしてはならない”状況なのである。
で、ここで論理学的に考えてみる。
ですね。で、αエラーを減らそうとすればβエラーが増大するのは、言うまでもないこと。さらに前述のとおり、社会的に危険が高い計画停電が(あるいは需要のオーバーフローが)生じてしまうエラー、つまりβエラーを回避しなければならないのである。
ならば、最初の避難が甚だ不適当であることがはっきりしよう。最初の避難は、要はαエラーを減らせ、と言っているのである。しかし減らせばその分βエラーは増える。そんなに計画停電起きて欲しかったんか、お前ら? と文句も言いたくなる。…で、まぁ最後のオチだ。結局計画停電が必要だろうと必要なかろうと、非難するんでしょ? 共産党は。楽な立場だねぇ。
唯一の調節電源
もう一つの話。当たり前の話だが、原発を再稼働させようとさせまいと需要のオーバーフローはなかった訳だが、その背景がまるで違うことはおわかりだろうか。
水力・火力・原子力・風力・太陽光・地熱、これらの発電の中で唯一、かなりの発電量を自由に調節させる方向に調節できるのはどれでしょう。
風力発電はこの反対側にある。要は風次第なので電力需要に合わせて発電力を調節できない(風が強すぎるとブレード[羽]が折れてしまうので逆に停止させねばならない)。太陽光発電は天候に左右され、これまた発電量を調整できない(照射日光面積以上の発電力はない)。地熱は温泉水次第。水力は多少調節は効くが夏場は渇水もありえるし、放水量の増減でも調整は数10万kW以下である。原子力発電所は一番調節が効かない。が、大発電量を24時間供給できる(停止するのは定期点検時と緊急時のみ。発電量調整での出力調整はごく稀*1 )。
もうお分かりですね。火力発電です。1基最大100万kWの発電器を、燃料調整で自由に出力調整できるわけですから。…え? それが原発再稼働とどういう関係があるのかって? さっき言ったじゃないですか。原子力発電所は調節が効かないけど、1基あたり100万kWクラスの電力を24時間供給できる。その間火力発電所をストップして燃料をストックしておける。そして需要増大に合わせて出力を調整してやればいい。つまり電力供給に“伸びしろ”ができる訳です。…原発を再稼働しないとどうなるかは、ご想像のとおり。現在どの電力会社も火力発電所フル稼働、しかもそれでも電力供給が追い付かないから廃炉寸前の火力発電所を無理やり稼働させている状態。もし何かの拍子に電力需要が跳ね上がっても“伸びしろ”がない。これが一番拙い状態。なぜなら需要のオーバーフローは突然の停電を招くから。これは産業界はこの際兎も角としても(全然兎も角じゃないんだが)、前述の患者さん方の命に係わる問題なのである。火力=石油と聞くと、石油ショックのトラウマからか、「中東がー、ホルムズがー」、という話になり、「火力は石油だけじゃないんだよ、LNGもあるんだよバーカ」、というしょーもない応酬が、Twitterで繰り広げられることがあるんだが、燃料は何でもいい、需要に合わせた電力供給に使えるストック、“伸びしろ”がない事が問題なのである。
こういう理由からも、単に「計画発電は必要なかった=原発再稼働は不要だった」にはならない事が明らかだろう。
また、電力供給が綱渡り状態なのに、需要を減らす努力を広めるどころか、反原発デモの後「冷たーい生ビール!」とか言われるとムカチンとも、来るだろうさ。