研修医が盛り上がるのは所詮CVや挿管のこと。おそらくこの2つが最大かつ唯一の関心ごとではないか。そんなのは100回やったことがある人でも入らない時は入らないし、10回しかやったことなくても入る時は入る。そんなことより、もっと医者として大事なことは山ほどあることを忘れないで欲しい。
— リウマチ膠原病内科医 タックマン (@takkman_rheum) 2017年8月13日
もう他で何度も書いたような気はするが、重要なことだと思うので何度でも書くことにする。
俺がまだ医者1年目で駆け出しの頃の話。もう最初っから血液内科医になるつもりだったから、腰椎穿刺が重要な手技であることは知っていた。だから麻酔科研修時に腰椎麻酔をやたらやりたがった。その最初、許可が下りた時、指導医はこう言った。
「おい。何でこの患者は全身麻酔じゃダメで腰椎麻酔にする必要があるのか、言えるか?」
「はい。***************************************************************」
「…正解だ。正解しなかったら、やらせないつもりだったよ」
…前立腺の手術だったんだけどね。
手技はできるに越したことはないし、何か「できたら俺カッコいい」感に酔える代物ではある。それは否定しない。だが医師にとって本当に必要なのは、目の前の患者の疾患の鑑別を挙げ、検査の予定を組み、それに従って治療の予定を組み、目的を達成するという“戦略”を立てることである。しかもどの過程でも必ず不測の事態は生じうる。「ありえないことはありえない」のだ。特に観血的手技ならなおさら。ただの採血ですら下手すれば永続的な末梢神経障害を招きかねないのである。絶対不可避な不測の事態をあらん限り想定した上で、手技に挑まねばならない。不測の自体が発生した場合、被害拡大阻止および現状復旧のために何をすべきか頭に入れておかねばならない。それを以て初めて「手技ができる」と言うのだ。そして所詮はそんなもの、全体の戦略の一部に過ぎない。そういうことを知らねばならない。
なお、当科は基本的にまわってきた研修医には結構観血的手技はやらせる。ただこれには前提条件があって、「上級医が常に同伴し、少しでも問題が発生した場合、ただちに強制終了させる」…と簡単に書くが、見ているこっちは気が気でない。どこでストップかけようか冷や冷やする。そういう意味では、実は上級医の鍛錬だったりもする。で、禁忌をやったら強制終了だけでなく後で説教部屋行きである。手技はともかくやってみないと上達しない。しかしやらせる限りは容赦しない。御給金貰ってる身だ。その責はしっかり取ってもらう。そういう方針なのである。