“セイギノミカタ”

ある方の日記から引用させてもらう。リンクしようにもmixi故、無駄なこと。

他人に奉仕することを求められている仕事*1につくにも関わらず、自分の幸せを第一に考えてしまいます･･･
でも、それって間違ってるんでしょうか･･･？

ハ、今更何を。間違ってないに決まってるじゃないか。
自己の幸せを第一に考える。そんなこと、人間なら当然のことで、もし「誰かのために」などと言い出したら、それこそ、“化け物アンリマユに化け物呼ばわり衛宮士郎される程度”に、異常なことだ。
そもそも、医療を他者の為の奉仕と考えることの方が間違いだ。医者を、何か神聖な職業だと思ってる? 大間違いだ。医療も人間社会における立派な経済活動の一つだ。人の命を預かる? そんな事が神聖さの理由になんかなるか。航空管制官がミスをすれば一度に数百人が死ぬ。水道局が仕事を放棄すれば誰しも干からびる。全員が離農してしまえば、俺達は明日食うものに困るだろう。職業に貴賎の差異は無く、あらゆる役割がまるで歯車の如く連関して、この世界は成り立っているのだから。まぁ流石に、詐欺集団やらSPAM送信者やらは、絶滅して欲しいもんだが(藁) そして「親切」や「礼儀」というものは、この連関においての潤滑油のような機能を有するものだ(「法律」等も、この類か)。何も特定の職業が身に付けるべきものじゃない。社会の一員である限り、誰しもが身に付けなければならないもの。社会で生きるための“代価”の一つだ。
そして、自己の幸福を追求するに当たり、支払うべき代価が、他者の幸福を潤すことになる。「利他的利己主義」というヤツだ。

社会心理学者の山岸俊夫は、相手に協力的な行動をとらせるために自分も協力的な行動をするような、利己的な動機に基づく利他的な振る舞いを利他的利己主義と呼んでいる。（『社会的ジレンマのしくみ』1990 サイエンス社） 自分が協力的でなければ相手も協力的にはならない。自分のことだけ考えていればその時は良くても、長い目で見た場合損をすることがある。もちろん相手に協力しても裏切られることはあるし、損したままで終わることもある。

もし、この世界に不均衡性があるとすれば、それは「然るべき代価が払われていない状態」だ。この娑婆、そういうことは残念ながらよくあることだが。そういうのを「理不尽」という。それはこの社会というシステムの不完全さという“ほつれ”だ。まあ、それは本題から外れるので、ここでは割愛するが。
だから、普通に生きて幾分には、「自分の幸せ」を追求するに、恥じ入ることなど、何一つ無い。それを嗤う輩がいるなら、それこそ“偽善者”だ。
ただ、もし。それでも。誰かの為になりたいと、願うなら。
誰かに“偽善者”と罵られても屈しない覚悟はある?
誰にも認められなくてもやっかまない覚悟はある?
悉く利用され尽くされても悪意を抱かない覚悟はある?
どれだけ力を尽くしても、その手から希望が毀れていく絶望に耐えられる覚悟はある?
「アンタの笑顔を見られればオレは幸せだ」と言い放てる覚悟はある?
臓腑はらわたに据えた覚悟に基づき行動するなら、それはそれで異常ではあれ、誇るべき一つの生き方だろう。勿論、そんな覚悟無いからしない、というのも一つの選択。好きにするといい。誰だって、自己の生き方は、自分にしか選べないし、他者がそれをとやかく言う筋合いは、無いのだから。「俺は俺だからだ。お前は、俺ではないからだ」*2ってヤツだ。
さあ、誰かの為になりたいなら、ジハード並みの覚悟は、あるかい?

「自分が嫌いで、一生好きになれなくて、それが分かっていながら、少しでも上等な自分になりたくて足掻いてきた。
オレはそういう無様なヤツがいい。結果はどうあれ、自分の為に進むヤツが好きなんだよ」
「それは、誰かひとの為ではなく?」
「ああ。そういうのは余裕のあるヤツに任せておけばいい。
アンタはもう少し、自分だけで手一杯だってことを自覚するべきだ。バカなんだから」

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*1:ここでは、医者のこと

*2:この一説は福永武彦の小説だったか