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彼岸の断崖


別に説得する必要もないと思っている。但し、本人にその覚悟があるのなら、ではあるが。

アラブのIBM

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俺がこれを知ったのは「日本の名句・名言」という書だが。

  • I:「インシャーアッラー
  • B: 「ブクラ」
  • M: 「マアレーシュ」

医療のIBM

私に言わせれば、血液内科医が概して「治すことに拘泥している」と思っている。いやまぁ、悪性リンパ腫Stage IVでも長期生存できる時もあるし、不治の病たる白血病も化学療法や造血幹細胞移植で何とかなるケースも少なくないのに、所謂生活習慣病でしてやられていては"やってられない"という気持ちも、分からんでもない。
だが、

人間が生き物の生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね

これは別に難病に限ったことではないと思っている。

俺は血液悪性疾患で当科を受診した患者および家族には必ず「化学療法を受けない選択肢」を最初に提示している。化学療法…要は抗癌剤治療で、副作用もなくすんなり効果を発揮して長期生存できる人もいれば、さんざん苦労しても再発・再増悪してどうにもならなくなる症例もある。検査の結果、良し悪しの推定はできるが、治療を受けるかどうか、ということと、既に患っている疾患(脳梗塞心筋梗塞など)で"治療をやった方が不味い…正確に言うと重症感染症などの有害事象で亡くなる可能性"があるかどうかを問うことにしている。勿論、「悪性腫瘍を放置すれば数か月以内で死に至る可能性は大」ということを踏まえて。それでも「悪化して死ぬなら本望、抗癌剤は受けたくない」という方はいる。俺はその選択を止めさせる権限はないと思っている。ただし「悪化してから『やっぱり治療する』と言われても、その時にはどうにもならなくなっていることは覚悟してくださいね。何だかんだ言って『やっぱりあの時そうしておけばよかった』と考えるのは、どの選択肢を選んだとしても、いざその時になったら考えが変わるというのも、人の性ですから」と、患者本人および家族に釘を刺すことは忘れない。

なぜならば。もうその人がそういう決断をしたのも「インシャーアッラー」、悪化してから「やっぱり治療受けたい」と思うことも「インシャーアッラー」だからだ。
治療を受けて長期生存を得られるのも「インシャーアッラー」、そうではなくすぐに再発するのも「インシャーアッラー」。

思った通りになるもならぬも、それを"神様"に"ぶん投げる"のが、「宗教」だと、私は考えている。それは最早、古今東西問わず、だ。
余程の過失が無いのに、その予後を我ら凡夫がどうこうできると考える事こそ恐れ多いのだ。…という発想には、本邦の人間には、思い至らぬのかもしれない。
どうにもならないものはどうにもならない。それを受け入れるのがブッダの"涅槃"ではなかったか。
どうにもならないなら、その"どうにかできるうちに、どうにかする"後に至るのが"涅槃"ではないのか。
どうにもならないものを「どうにかなるかもしれない」と拘泥するのは、果たして正しいことなのか?
そして。
どこで"どうにもならない"と判断するのか? と理系は問うだろう。
そこに、彼岸の断崖はある。

断崖

死にたきゃ死ね。而していざという時になって『死にたくない』と今更のようにのたまう人間を沢山知っている。人間とは、そういうものだ。自分の思想に殉じることができる人間は、実に少ない。イキるな。生きよ。

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