肝生検後、止血のため暫く身動きの取れない若き生体ドナーと、傍らにずっと寄り添っている婚約者。彼女は検査の間ずっと立ち会っていたのでした。“生検”ですからね、俺達は慣れたものでも、普通の感覚から言えば結構怖いものでしょうが…気丈なものです。
エコーを使うため検査室は薄暗かったのですが、彼らの間は決してそうではなかったでしょう。お邪魔にならないよう、我々は部屋からそっと抜け出して検体を検査室に運びに行きましたとさ。
願わくば、レシピエントが早く無事退院して、彼らの結婚姿が見られんことを。
もう、ずうっと前の、出来事です。