大学病院11階の学生実習室からは、北大から北に広がる市街地を一望することが出来る。今日は晴れていたので暑寒別山系まで良く見えた。…って、あれ? あんなところに、あんなキレイな並木道なんてあったかなぁ?
という訳で、普段の登庁路から西に2区画ズレた、その道を通って帰ることにした。
いつも通る道から少し離れただけなのに、夕暮れに染まる並木も、隣接する公園に植えられた藤の花の香りも、制服姿の高校生が帰っていく影も、誰かさんが気に入っていた呑み屋の造りも、どこぞの駐車場でバスケの練習に汗を流している少年の姿も、何もかも鮮やかに見えたんだ。
——なぁ、アンタも、こんな風景を見て生きてきたのか? 今も、こんな鮮やかな世界の中で、夢に向かって走っているのか?
…そして俺の“とおまわりのかえりみち”は、恐らくそれ程遠くない未来に、働いているだろう病院と同じ医療法人を母体に持つ、病院の横を過ぎて、終わりを告げるのだ。