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感覚で理解できないなら理屈で理解しろ

ちょっと、テーマが重いし、辛辣な書き方をするので、読まれる方は御覚悟めされよ。


普通に生活している人にとっては、自殺願望なんざ到底理解の及ばぬ事なのだろうけど。故に、何故わざわざ「ネット上で自殺予告」なんてするんだろう、と不思議がるのも仕方の無いこと。しかし、医者がこれを言っちゃぁ、オシマイだな。
気持ちや感覚を判れ、とは言いません。他者の心境や感覚を理解しようなど、どだい無理な話ですから(「推測」したり「共感」したり、あるいは「了解」することは可能ですが)。
自殺願望…というのはあまりに俗な表現なので「希死念慮」というテクニカルタームを使いますが、うつ病統合失調症などで希死念慮を呈するのは、肝不全で黄疸を呈するのと同じ、一つの「症状」です。前者は「脳の機能の不調」、後者は「肝機能の不調」と臓器が違うだけの話で。しかも前者は神経伝達物質の異常、後者は肝細胞内の代謝酵素の異常、と分子生物学レベルで病理機序が明らかにされつつあるところまで類似してます。…ということは、医学部で学ぶ知識通り一遍並べれば、誰だって分かること。
ならば。うつ病希死念慮を呈した人が「死にたい」と訴えるのも、肝不全で黄疸呈した人が「体が痒い」と訴えるのも、両者とも同じ“主訴”で、希死念慮も黄疸も、両者とも同じ“症状”です。
(上記の記事の例のすべてがうつ病であるとは言いませんが、少なくとも気分障害はあったのではないかとして書きます。)ネットで“わざわざ”自殺予告する、その裏には「誰か助けて、訴えを聞いて!」という叫びが張り付いている。だのに、「脳の機能の不調」故に、それを上手く表現することさえ出来ない。そういうものです。それを「自殺したけりゃ、ひっそりとやれば良いのに。」とか「単に甘えているようにしか思えない。」と突っぱねるのは、医者云々以前に、良心あれば到底出来ない発言だと、思いますがね。そもそも、主訴突っぱねる医者が、どの世界にいると?
精神疾患だって、他の臓器の疾患と同じように「早期発見・早期治療」が重要なので、希死念慮を抱いた人は、早々に然るべき処置を受けて頂きたい、と願うばかりですが、上記のような突っぱねが世間に横行していと、受診機会を失する原因となります。「これはただの甘えなのか」と自分を責めて、ますます症状が悪化する、と。そういう事例がいくつある事か。手遅れになる前に、是非手を打っていただきたい。警察庁の今後の活躍に、期待する次第。
…って、人任せにしている場合でもないのです。多くの場合、希死念慮に至るずっと前、まだ抑うつ状態の軽い時期には、“心身症”のように、消化管症状などの不定愁訴を呈することが多いですが、こういう症状を真っ先に診る人って、誰でしょうね? この段階でいきなりメンタルクリニックへ行く人はまずいない。外来内科医ですよ、最初のスクリーニングをするのは! 身体症状の“裏”をスッパ抜けるかどうかで、その患者の予後、大いに変わるかと。
私、内科医志望ですので。

なお、随分色々書きましたが、「何を知ったかぶりを」というツッコミがあるかも知れません。確かに、専門家でないですし、まして未だ医師ですらない、一介の学生です。が、長いことこのサイトをご覧になっている方は既にご存知だと思いますけど…元“患者”ですから、俺。過去ログを探せば、SSRI使用歴が明らかになるかと。希死念慮について、少なくとも「理解できない」とか言ってる人たちよりかは、理解してると、思いますよ。

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