ちょっと呟いてみる

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壬生の狼

ともすれば全ての価値が金額に兌換される価値観が蔓延するこのご時世、医師の指名権を金で贖おうとするのは、そう不自然なことでもないと思う。根幹の価値観が異なるのだから、互いの価値観に基づいた発言のやりとりなど無意味であり、相互理解など不可能である。
事実、此の世界においては、かなりのものが金で買える。物資はおろか、マンパワーとか、権利とか、そういう無形の類すら金で動くのは事実なのだから。
ただし。
価値を金額に兌換したところで、ではその金額さえ支払えば手に入るかどうかは、別問題なだけで。
思い出とか記憶とか、愛とか徳とか、情熱とか矜持とか、時間とか未来とか———凡そ“概念”と称されるモノはどれほどの金銭でも買えない、という厳然たる事実の前に、幾つかの価値観が敗北するだけの話なだけで。
「金の力に溺れ身を滅ぼす」っていうけど、単に価値観が事実に敗北してるだけだと、思うんだよなぁ。

犬は餌で飼える
人は金で飼える
だが壬生の狼を飼う事は
何人にも出来ん

和月伸宏るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」

世間に貢献する事。人を救う事が徳である。
彼女は壊す事しかできない。
繕う手を持たない人間には、真の意味で信頼は勝ち得ないのだと、彼女の目が訴える。

「それは誤認だと思うけどね。」
「いいえ。私には私財をなげうって貧窮の民を救う事も、新しい組織を作る事もできない。あくまで歯車の一つで、いつまでもちっぽけな一個人から抜け出せない。
…そんな人間に、高い徳なんて得られる筈がないでしょう」

「―――まさか」

やば、思わず本気で怒っちまった。
まずいなぁ、本気になってるかなあ、オレ。

「それだけは完璧に間違いだ。金で徳は買えねえよ。
徳ってのは魂の質だ。それは得るものじゃない。苦しみながら、自分の中で培うものだろ」
「――――――」

どんなに矮小な人間にも、どんなに無力な人間にも、どんなに無価値な人間にも。
それは誕生から共にある平等の機能、前に進もうとする意志によって磨かれる輝きだ。

…善悪の区別なく。
生き物として高みを目指すモノのみに、唯我の悟りが開かれるように。

「徳は―――自らの価値は、外的評価によるものではないと言うのですか」
「あ? いや、価値って話なら外的評価が全てだよ。
その為の徳、その為の自己練磨だ。せいぜい高値ふっかけて、自分を自分以上に買ってくれるヤツとくっつく為のパラメーターだよ」

内的宇宙の向上は、結果的に外的宇宙の向上に繋がる。
見栄っぱりで寂しがり屋な人間ほど『いい人』である事に固執し、その浅ましさに恥じ入るのだ。
嫌われたくないからいい人であろうとするなんて、自分はなんて利己的なんだろうと。
だが。

「―――それでいいじゃねぇか。誰かに認められたいって気持ちはな、誇っていい事なんだよ。その気持ちがあるヤツは、同じように、きっと誰かを認めてやれる。
アンタの方針が結局は自分の為だって言うんなら、間違ってなんかいねぇってコト」

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