最近読んだ本の一節から。
「現実主義者は、それが個人であっても国家であっても、なぜ常に憎まれてきたのだろう」
(中略)
「現実主義者が憎まれるのは、彼らが口に出して言わなくても、彼ら自身そのように行動することによって、理想主義が、実際は実にこっけいな存在であり、この人々の考え行うことが、この人々の理想を実現するには、最も不適当であるという事実を白日のもとにさらしてしまうからなのです。
理想主義者と認じている人々は、自らの方法上の誤りを悟るほどは賢くはないけれど、彼ら自身がこっけいな存在にされたことや、彼らの最善とした方法が少しも予想した効果を生まなかったことを感じないほど愚かではないので、それをした現実主義者を憎むようになるのです。だから、現実主義者が憎まれるのは、宿命とでも言うしかありません。理想主義者は、しばしば、味方の現実主義者よりも、敵の理想主義者を愛するものです」塩野七生 「海の都の物語 1」
海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/28
- メディア: 文庫
- 購入: 8人 クリック: 35回
- この商品を含むブログ (49件) を見る