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日々の戯言、写真、旅行記、好きな音楽、格言

医食同源?

「食べるもので気を付けることはありますか?」
抗がん剤の治療後で白血球の数が減っている時には、
「ナマモノは食べるな」
「カレーは食べていいけど"一晩寝かせた"カレーは食べるな。要は空気にさらされた状態で1日放置されたものは食べるな」
「工事現場と土埃から逃げろ*1
「コンビニのパンが腐らない理由を知ってるかい? 別に防腐剤が入ってるからじゃない。袋の中が無酸素だからさ。今の梱包技術はすごいぞ、防腐剤なんか使わなくたって袋に入ってれば何日も腐らないんだ。でも袋を開けたら2日もあればカビが生える。ナマモノとグレープフルーツ*2以外は食べ物の種類ではなくて、"酸素に何時間触れたか"で考えなさい」
「マヨネーズもいいけど、使い切りね。でかいチューブに入ったヤツを冷蔵庫に入れておいたとしてもダメ。何回も言うけど食べ物の種類ではなく"空気に何時間さらされたか"で考えなさい」
と説明する。
同種造血幹細胞移植には"災害用非常食"="何年も常温で保存しても菌の増殖がないように設計されている"
が最適だと聴いて、「なら『宇宙食』はコスパを除けば最強だな」と大笑いしたこともある。当たり前だが宇宙ステーションに供給できる物資は限られている。食料は冷蔵設備が無い状況(ただでさえ電力供給が限られている環境で、"食品用の冷蔵庫"など使える余裕はない)なので、常温で半年は保つ食品しか、供給できないのだ。まぁ、その"常温で半年は保つ"以外の様々な制約をクリアして、何としてもクルーに最高の料理を食べてもらおうと奮闘するフランスの三ツ星レストランのシェフの奮闘をNHKの「地球ドラマティック」で放送していた*3から、知っていたのだけれど。

閑話休題

問題は感染制御や薬物相互作用の話ではなくて。
白血病悪性リンパ腫、多発性骨髄腫。いずれの血液悪性腫瘍も、「何かを食べたから発症する訳でもない」し、「何かを食べれば治る、再発しない、っていうものでもない」のである。だから「先生、治すためには/再発させないためには、何を食べればいいですか?」と、外来でしょっちゅう訊かれるのだが、答えは上記の通り。食べ物で悪性腫瘍が治るのなら、苦労はしないよ。

ただし。

「食べ物でガンが治るわけでも、再発しないようにできる訳でもないけどさ。日本人の死因の第1位はガンだけど、2位と3位は脳卒中と心疾患、要は生活習慣病のせいだぞ? せっかく苦労して白血病/リンパ腫が治ったっぽい*4のに、生活習慣病脳卒中心筋梗塞になって死んじまったら"俺が泣くぞ"。それによしんば再発したとして、脳梗塞とか心筋梗塞とかの合併症があるとないとじゃ、治療の成功率も雲泥の差だろ? 食生活で血液の病気がどうこうなるわけじゃないけれど、生活習慣病っていう"余計なものを呼ばない"工夫はできる。食生活云々を心配するなら、そっちに気をつけなさい」
…書いてて思ったが、俺の外来はロクなもんじゃないな。なにせこれを誇張やネタじゃなく"ガチ"で言ってるんだから。夕立もビックリだ。

*1:真菌の胞子が舞うから

*2:これは感染防御というより薬物相互作用の問題

*3:地球ドラマチック 「宇宙食レボリューション~三つ星シェフの挑戦~」

*4:未来永劫再発しないという意味の「治癒」ではなく、今のところ再発はないという「寛解」が正しい表現である。長期に寛解を維持できれば治癒と呼んでもいいのかも知れないが、それは結果論であって、その診察時点では治癒とは言えない。ただ、患者さんは症状が消え、検査結果も正常になったら"治った"と思いがちなので、「あくまでも"治ったっぽい"なんです。さすがガンだけあって反撃の機会を狙ってるだろうから、油断しないで(あと5年は)診ていきましょうね」と説明する。「夕立の口癖をパクらないで欲しいっぽい!」

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