異世界居酒屋「のぶ」のエピソードで特に好きなのは何話かあるが、趣深いエピソードだと思っているのは、この話。
しのぶとタイショーと共に年を越すことにした、異世界の住民の常連ベルトホルト・ヘルミーナ夫妻が、年越しの晩餐(チーズフォンデュ)を食す前に祝詞を捧げる。
「……今年も陽の神、月の男神、月の女神の三柱の御加護でこのように一年間腹いっぱい食べることができました。来年も同じように腹いっぱい食べられますように」*1
「飽食の時代」とはよく言ったもので、スーパーに行けば食材はあるし、コンビニでは24時間食べ物が買える。余剰は廃棄すらされる。だが、そういうこと自体が"異常"なことで、食うことすらままならぬ時代が、1世紀も前なら当たり前のことだったのだ。
食にありつけることの有難さを忘れた人間から、地獄に落ちていく。私はそう思っている。
*1:原作とコミック版では若干の違いはある