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兵站とツンデレ

「医療は軍事なり」は私の戦闘教義ドクトリンである。兵站ロジスティクス戦略ストラテジーも。
夜間休日は勤務する看護師、検査技師の人数は限られるし、医者だって休みをとる。観血的処置などリスクを伴う処置をそのような時間に行うのは、限られた労働力をさらにそれに割いてしまうのみならず、不測の事態になった際に初動が遅れる危険がある(人手が足りないから)。そのような処置は平日日中に行うのは当然である。また、当科で言えばリツキシマブの初回投与のように重篤な有害事象を生じる危険のある治療も、可能なら平日日中に行うべきである。もう一度言うが、限られた労働力をさらにそれに割いてしまう=看護師さんの面倒が増えるのみならず、人手が足りないが故に、不測の事態になった際に初動が遅れる、患者さんを危険に晒す可能性があるということだ。
しかしながら医療においては緊急を要する事態は多々あるもので、平日日中まで待つ方が、夜間休日に処置するリスクを上回る事も度々。その時には躊躇わず実行の号令をかけねばならない。それが医者の役割だ。
問題はこの時、手間が増えるからと看護師含めコメディカルの方々から文句を言われるかどうか。俺がいる病棟のスタッフは「もう、今回だけだからね!(今回だけではない)」とツンデレかましながら何だかんだで手伝ってくれる。実際人員を割いて手間を増やしている訳で、多少の憎まれ口を叩かれるのは、そりゃそうだろう。人間なんだから。その程度の心の余裕がある程度には、お互いの気心が分かってない職場にはしたくないね。何だかんだで人手を割いてくれるのは、前述の理由により「如何に看護師・コメディカルの皆に過剰な負担にならないように指示を出すか」を心がけ、それを実践しているからに他ならない。「医療は軍事なり」を踏まえるなら、医師は"提督"なのだ。我らの号令で皆が動く。この時に兵站人員を無視した無茶苦茶な号令をかける輩に誰が従うものか。「いいから私の指示に従え」などという強権的な輩に誰が好意を抱くものか。号令をかける職を任ずる者として、号令をかけられた側がどのように行動するかまで想定しないで、どうしてその職の責を負えるのか。
そして。普段からこのように配慮を欠かさないからこそ、"緊急事態宣言"が効くのである。「アンタが普段そんなことをしないのに"する"ってことは、どうしても必要なんでしょう? ただ愚痴くらい言わせなさい」(ニヤリ) で、俺も「すまんのう」(ニヤリ)。皆医療者なんだ。患者さんに対して"今この処置が必要ならする"という意識は皆持っている。それが、何の配慮もなく"緊急事態宣言"を乱発するか、どうしても必要な時に限って発動するか、たったそれだけの違いだけだろう。

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