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Kampfgruppe

原典が見つかれば置き換える。
Twitter(X)でこんな投稿があった。
「便器の修理をしていたら『勉強しないとあんな仕事をすることになるのよ』と子供にいうのが聴こえた。悲しい」

まず、当科を研修する研修医、および見学に来る学生に、俺が叩き込む概念が

「医者だけで医療が成立してると思うなよ」

医師、看護師のみならず、薬剤師、ソーシャルワーカー、検査技師、医事、庶務、工務から清掃まで、ありとあらゆる職種が、各々の職務を遂行することによって医療業務は成り立っている。そのどれ一つを欠いても、我々の業務は成り立たないのだ。医師の業務など、数多の職種の上にしか成り立たない。我々は「戦闘集団Kampfgruppe」なのだ、ということを教えることにしている。他職種を馬鹿にするなど、以ての外だ。

夜間帯で注射のオーダーを出そうものなら、そのオーダーを出した研修医を呼ぶのだ。「よし、俺と一緒に薬品庫に行くぞ」。夜勤帯で働く病棟看護師は少ない(2-3人)。地下の薬品庫に薬剤取りに行くだけでも人員一人取られるのだ。病棟の防衛を手薄にしてなるものか。なので、当科名物「時間外に手前で処方した薬剤は手前で取りに行け」。
性質が悪いのは「俺と一緒に薬品庫に行くぞ」。なにせ科長たる俺が普通に薬剤部まで行って取りに行く。「行きたくない」というのであれば「あ、そ。じゃあ俺取って来るわ」で終わる。直轄外の病棟ならビビられるが、当科病棟のスタッフなら慣れたもの。薬局も新顔なら「先生が直接取りに来たんですか?」と引くが、そうでなければ「先生、いらっしゃーい。今準備しますね」。さすがに慣れたものである。
…ということをやっていると、当科の他の馬鹿ども医師も似たようなことをやり始める。他所はどうだか知らないが、我ら一門の血液内科医は”やりたがり"なのだ。指示だけ出して、結果が出るまでふんぞり返っているのは性に合わんのだ。どうせ検査結果が出るのを待ってるくらいなら、時間外に自分が指示出して払いだされた薬剤を取りに行くくらい、どうってことないのだ。

勿論、これの意図は"部下に労働を強いる"ではない。

  • 時間外にオーダーすることで消費される労力があるのを理解しろ。できるだけ日勤帯で指示を終わらせろ。
  • 「薬品庫」に入ったことのある医者は多くはないのでは? 薬局からの薬剤の払い出しの現場を知れ。自分が投与しようとしている薬剤がバイアルなのかアンプルなのかシリンジなのか、自分の手で確かめてみろ。

なので、少なくとも今のところ、当科に来る研修医は皆優秀なので、これ1回やれば「自分が出した指示がどういう結果になるのか」というのを理解してくれるので、日中に出すべきオーダーを時間外に出すことはなくなるし、どうしても時間外でも投薬が必要な時は「普段気を使ってくれる先生が"今必要だ"っていうんだから、やるよ」と言ってくれるのを理解してくれる。少なくとも、"指示だけ出してふんぞり返る馬鹿"はいない…はずなんだがなぁ。

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