国試勉強をしていて思い出されたepisodeを語ってみようという新コーナー。いつまで続くかな?(藁)
多分多少なりとも思い話にはなると思うので、ご覧になりたい方は「続きを読む」をclick願います。
必修問題の禁忌肢の定番として、こんなのがある。
高齢の患者の診療に対する態度として適切なものを選びなさい。
- 「○○ちゃん」などと幼児語を使って雰囲気を和らげる。
まぁ、どこをどう考えたって×に決まってる…と思うのだが、多くの人(医療関係者だけじゃない)がこういうことをやるから、わざわざ国試になんか出題されるのである。
確かに、認知症や脳血管性疾患の後遺症などでは、行動や会話がまるで幼児化したように見えることもある。が、実際は幼児化なんかしていない。何故なら、「自我」と「記憶」というのは、そう容易くは障害されないからである。
仮令行動パターンに支障があろうが、失語になろうが、よほど重度でない限り、誰だって“自分”という概念があり、これまで積み重ねてきた“経験”や“歴史”が在る。そしてそれが在る限り、その人はその歳相応のその人であり、時間の退行などしていないのだ。“物心のついていない”お子様とは違う。70歳なら70歳のその人がいる訳だ。だのに、幼児語を使って話されたりすれば、我々がそれをされたら憤慨するのと同じく、憤慨するだろうさ。実際、脳梗塞の患者さんで、夫がずっと看病・リハビリ同伴をしていたのだが、子供を育てるのと同じような態度をとっていたら、当の患者さんがリハビリを放棄するようになってしまった…というのが、昔のNHKスペシャル「脳と心(5)」で放送していた話だったか。実のところこの話は、その番組で、行き詰った夫にアドバイスしていた医師の話の受売りなんだけど。BSLやその他で色々経験させてもらって、ホントにそうだよなぁ、と心から理解した次第。
脳と心 脳が世界をつくる 知覚 (NHKサイエンススペシャル 驚異の小宇宙・人体)
- 作者: NHK取材班
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 1998/12/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
失語症のリハビリの道のりは長い。彼女のリハビリも例に漏れず遅々として進まない。回復を待って会社や資産の分与をしようと思っていた家族も待ちきれなくなったのか、ある日彼女の病室で言い争いをはじめた。どうも子どもたちのうちの誰かが、勝手に弁護士を頼んで、成年後見を立てようとしたことが原因らしかった。
(中略)
恐る恐る、先輩について病室に行くと、今にもつかみ合いの喧嘩になりそうな状況だった。先輩はその家族の間に割って入り「患者さんのためですので、そういったお話はやめてください」と言ったのだが、その家族「どうせ聞いたって何もしゃべれないんだから、別にいいじゃないか!」と逆ギレした。すると先輩も、ぷつっとどこか切れたらしい。
「確かに話せませんが、聞こえているんです!理解できるんです!話せないけど、心は○○さんのままなんです!そんな話は外でやってくださいっ!」
なんだと看護婦のくせに、無礼な口をききやがってこの話は婦長や院長の耳にも入れておくからな、覚えてろよ。という捨て台詞とともに、家族はぞろぞろと病室から出て行った。
遺産相続で子供同士の揉め事か。「それ何て言う人間交差点?」
…俺なら、どういう対応してるんだろう…? と、とりとめもなく考える今日この頃です。