今回は『亡国のイージス』より。タイトルの元となっている、作中に登場する、或る青年防衛大学校生の論文の一節であり、すべての物語はここから始まる。私がこの作品を心底好いた理由も、ここにある。
《重要なのは、国民一人一人が自分で考え、行動し、その結果については責任を持つこと。それを「潔い」とする価値観を、社会全体に敷衍させ、集団のカラーとして打ち出していった時、日本人は初めて己のありようを世界に示しうるのではないだろうか》
《保身ばかりに長けた政治家ではなく、一人の人間として自らを誇れる人物にこの国の舵を取ってもらいたいと願うのは、過分な望みなのだろうか。そうした人たちがその存在をもって範を垂れ、すべての人に美徳を示すことは夢なのだろうか》
《ギリシャ神話に登場する、どんな攻撃もはね返す楯。それがイージスの語源だ。しかし現状では、イージス艦を始めとする自衛隊装備は防御する国家を失ってしまっている。亡国の楯だ。それは国民も、我々自身も望むものではない。必要なのは国防の楯であり、守るべき国の形そのものであるはずだ》
- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/07/16
- メディア: 文庫
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