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イーハトーヴの空 day2

terra-khan.hatenablog.jp
続きです。しかし


まずこの服装でうろつこうっていうのがどうなのかと。

鉛温泉 藤三旅館→花巻駅

藤三旅館からはまずマイクロバスに乗って県道12号沿いのバス停に送られた後、新鉛温泉発のバスに乗って花巻駅(終着は新花巻駅)に向かう。「あれ? 昨日は南花巻温泉峡全部に停まったんだけど、このバス全員乗れるの?」と心配したが、復路は、俺が乗った新鉛温泉発のバスと、それよりかなり下流にある温泉から出発する便が何本もあって、花巻駅新花巻駅に送るシステムになっている(こちらのPDF参照)。なんとも分かりにくい。
ともあれ、到着したのは予定の10:30よりかなり早かった。そして花巻から遠野に行く列車は便数があまりない。乗車予定の「はまゆり3号」は12:16発。…時間は十分あるな。

花巻城址探訪

花巻駅前のオブジェを動画で撮影していたら、某社○党の演説の五月蝿いこと。しかもこの花巻市探訪中、延々と聞こえてくる羽目になる。
とまれ、花巻駅に撮影資材以外のキャリーケースはロッカーに入れ、城跡公園まで約20分の徒歩の旅。

遊歩道とお堀跡

西御門(復元)

鳥谷ヶ崎公園


本丸跡。左のブルーシートは発掘現場。

一の郭(掘)遺構


この本丸跡の背後に、小学校や幼稚園、武道場などの施設がある。遺構そのものは相当に大きい。
上記の教育施設や宅地化された地域を南に進むと、ようやく当時の風景を思わせるものに遭える。その途中で出会ったのが

花巻開町400年祭記念山車


円城寺門


本来別の城の門であったものを慶長年間に花巻城の搦手門として移築したもの。花巻城址のなかで当時のままの遺跡の一つ。

鳥谷崎神社




建立が何時なのか定かではないにしろ、前九年・後三年の役から関わっているというのだから由緒は相当に古い。勿論御朱印を頂いてきたが、社務所で「参拝はされて来ましたか?」と尋ねられて「当然です!」とふんす!しなければならなかったのが、少し哀しい。何回も言うが、御朱印とは"参拝証明書"であってスタンプラリーではないのだ。
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御近所の方であろうか、七五三かな? 男の子が袴来てやって来ていた。「かっこいいねぇ!」と思わず声をかけた。当の本人はふぃっと顔をそむけて行ってしまったが、お父さんらしき人が「ありがとうございます」と笑っていた。…うーん、こんな声をかけるなんて、俺もジジ臭くなったかねぇ?(苦笑)
さて、その後できるなら盛岡わんこそばで有名な「やぶ屋総本店」で蕎麦を食べたいなと思って、花巻駅への最短ルートでなく、店舗を目指して歩いていたら、途中の花巻市役所の向かいに、あったのである。

南部盛岡城楼鐘


花巻城の当時の面影を遺すもう一つの遺構である時鐘。移築はされているとはいえ、鐘は当時のものである。…全く、予定していないブラ歩きには、予想もしないモノに出くわすもんだ。

花巻駅

さて、当の目的地の「やぶ屋総本店」に着いたわけだが、出発まで残り約50分。そして店には行列。…諦めた。大人しく花巻駅に戻り、駅のそばを食べました。
さて、12:16発「はまゆり3号」乗車、向かうは伝承の郷、遠野。

釜石線

快速列車「はまゆり」に特記すべきことはない。しいて言うなら、この列車は始発が盛岡駅で、花巻駅スイッチバックして釜石線に入る。そのため盛岡駅からの乗客で自由席はほぼいっぱい。そんなこともあろうかと指定席券を購入していたのは正解であった。荷物が多くて移動が困難なところに、350mLの清涼飲料水2本にも満たない料金をケチらない方がいいと思う。
ところでこの釜石線、前身の岩手軽便鉄道宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のモデルとあって、愛称は「銀河ドリームライン釜石線」、そして各駅にはエスペラントによる愛称がついている。

宮森駅 駅標

遠野駅 駅標


土沢駅の駅標の写真は発車直後でブレてしまったよ。
とまれ、遠野駅に到着。そして遠野駅には、出発準備をする「SL銀河」が待っていた。

SL銀河 @遠野駅

機関車 C58 239


客車からやや離れて蒸気機関の稼働中。

客車


先頭客車の側面にはさそり座の意匠が。

客車内



各客車内には座席以外に展示スペースも有るらしい。一度乗ってみたいものだ。

機関車-客車連結後


後述のレンタサイクル貸出後。出発にはあと20分かかる。今回はSLを撮影しに来たわけでないし、どうせ撮るならここではなく「宮守川橋梁」を走るSLを撮るべきなので、それはまた後日、だ。

遠野を駆け抜けろ!

いつぞや記述したが、遠野には約6、7年前に来たことがあるのだ。当時はPENTAX K-100で撮影していたが、今回はフルサイズのK-1で撮影しよう、と思ったのが一つ。もう一つの目的は、この曲のせいである。

デンデラ野にまつわる話は調べた。だが、その場所はどのような場所か。行ってみたかったのだ。
さてここで問題はそこへのアクセスである。そんなマイナーな場所へ行く公共交通機関はほぼない。方法は

  1. 観光タクシーを使う
  2. レンタカーを借りる
  3. レンタサイクルを借りる

当初考えていたのは1. 2.は事故ったら面倒。しかし…快晴であることと、中年太りして膨れた腹をみて思ったのだ。「よし、自転車で行こう!」


装備をGPSギアに替えたのはこういう理由である。
ということで、遠野駅前にある「遠野市観光交流センター『旅の蔵遠野』」の隣接ロッカーにキャリーケースを入れ、自転車の旅に出発!

まぁ、世の中そんなに甘くなかった訳で。

13:25 遠野駅→13:40 キツネの関所

レンタサイクルを借りてから駅前で暫くSLを撮った後に、目的地へ進発。

キツネの関所


旅人が酒を勧められ、酔いまくって温泉に浸かっていたと思ったら、目が覚めたら泥田や肥溜めの中、化けて酒を勧めていたキツネは旅人の荷物を全部かっさらってサイナラ。
丁度山道で漕ぐのに疲れる地点なので、わからんでもない。しかし自転車じゃなきゃ訪れないな、ここ。

キツネの関所→13:50 伝承園

国道は住宅街を離れて走るが、自転車は分岐北側に乗って伝承園へ。

伝承園 板倉と工芸館


伝承園に入って真っ先に広がる光景。これこそ伝承園、日本の原風景!

板屋の飾りもの

脱穀

唐箕


「おれのだ」誰のだ。
さて、ここからである。工芸館の向こうにある曲り家に接続されているのが「オシラ堂」である。

オシラ



4畳半程の堂の四面に、祈りが書き込まれた数多の布が重ねられたオシラ様が無数に飾られている。6年前にここを初めて訪れた時には、ゾッとした…とは少しだけ違う何かを感じた。所謂"お化け"とか"亡霊"に対する恐怖感でなし、かといって"ハスコラ”のような反復するパターンによる嫌悪感でもない。「人間の祈りとは、ここまでの造景を成す強い力なのか」という「チラカに対する畏敬」なのだ、と、もう理解しているから、今回はどうということはないのである。ここにあるのは、祈りの重層である。

みず木飾り



"こちらではそう呼ぶ"。北海道では正月に飾る"まゆだま"と呼んでいるのだが。

曲がり家

常堅寺・カッパ淵

さて、伝承園で自転車を止めておき(常堅寺・カッパ淵には駐輪場・駐車場はありません。伝承園駐車場に止めてからお越しください!)、カッパ淵へ。

ホップ農場



…余談だが、実はビールに使われるホップの国内生産1位はここ遠野なのである。

常堅寺 山門


俺はすっかり見過ごしていたが、もしここを訪れる方がいたなら、"狛犬"に注目して欲しい。この寺がなぜ河童が住む場所の近くなのか、ヒントがあるから。

カッパ淵



釣竿の先にあるのはキュウリ。伝承園で「カッパ捕獲許可書」を購入したら、釣り竿の先にキュウリをつけて垂らしてよいことになってます。今回は何もありませんでしたが、6年前は「淵に落ちた」人がいました(実話)。河童に引きずられたのでしょう。

カッパ淵の御堂


常世の限界線

さて、ここまでは6年前に来た道。ここから、今回の目的地、デンデラ野へ向かう。

猿が石川


川面が碧い。さっきまでシラサギがいたんだが、逃げられた。
ここからがヤバかった。国道340号かの分岐以降はひたすら急勾配。ヒーヒー言いながら登り、疲れ果てて自転車を押しながら徒歩で坂道を上る。「もう帰ろうかな…」と何度思ったことか。そこで分岐、デンデラ野への道は下り坂。「あれ?」と思って進んだ先はまた登り坂だったが…その先に、あったのだ。

デンデラ





この地は、嘗て齢60になったものが過ごす地だったのだ。年老いた親を子が背負ってここに運んでくるのだから、所謂「姥捨て山」に近い。ただ"姥捨て山”と違うのは、ここの老人は里に下りてきて労働していいのだ。労働の対価として食糧を受け取る。それを糧にして生きていく。しかし冬季や飢饉の時は? 言うまでもない。そういう土地なのである。残酷とか寝言をふいてはいけない。「限られたパイを分け合うに当たって、どのような配分をすべきか」という至極真っ当な論理でしかない。…ないのだが。
撮った写真のテーマはただ一つ。「"こっち"と"あっち"」稲穂色づく"人の生きる世界"と、薄たなびく"これから死にゆく世界"が、ここにある。
…とはいえ、だ。

デンデラ野の直下には黄金色の稲穂が輝く。数百年前は生き残るために老人を放棄する地だった山間部は、もはやそうしなくてもいいように食わすだけ耕せるだけの技術を、人類は手に入れた。しかしそれは新たな"姥捨て山"を作り出したに過ぎない。技術とは、文明とは、何なのか。それを知りたくて、ここに来たのだ。

デンデラ野→ 15:30 山口の水車

デンデラ野を去って、道路の分岐まで戻る。子が親を背負うレリーフがある山口橋というのはあるのだが、山口川護岸工事でロープが張られているので気分ぶち壊しである。撮影もしなかった。
とまれ、ここが最後の終着点、「山口の水車」だ。

山口の水車



動画はいずれ。

15:40 山口の水車→16:45 遠野市観光交流センター『旅の蔵遠野』

ここからは全速力…と言いたいが、途中で気付いたのだ。…あれ、早池峰山か?

遠野から望む早池峰山

金色の野・空と息づく煙


レンタサイクルの返却手続きをした後、キャリーケースを回収し、今回の宿泊地「あえりあ遠野」へ。

走行距離

  • 合計コースタイム 3:19
  • 距離 21.78km
  • 高低差 139m

あえりあ遠野

遠野駅前の宿泊地はそうそうなく、しかも「夕方に遠野の伝承を聞ける」という点では、宿泊地はここしかないのであるが、施設レベルは俺の評価では「中の下」である。
評価項目は以下の通り。

  • 施設レベルは中級の宿泊地レベル。極端な古さも感じないし、汚い感じもない、標準レベル。かつ喫煙室が確保できなかった場合は「消臭処置をした部屋でもよろしいでしょうか」と事前に確認してくれる
  • 室内着(浴衣)での夕食(1Fレストラン)は不可。しかしこれは上高地の「ルミエスタホテル」でも同様であった。
  • 部屋の蛍光灯が古いためか「ジー」という雑音がうるさいのが大失点。消灯しなければならないが要は暗い。このくらいチェックしておけ。
  • レストランの料理の質は全くあてにならない。朝食のみのオーダーにして夕飯は外の店を探した方がいいんじゃないか? (外に出るのが面倒でないなら)



呉で良い店に出会ったように、遠野でも良い店が見つかることを祈る。

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